日焼け止めがサンゴ礁にダメージを与えるのではないか?という疑いは随分前からありました。しかし、サンゴ礁の死の問題は単に日焼け止めの影響だけでなく、温暖化が大きく影響しているとされ、温暖化を中心に注目されてきました。
今回、ついに日焼け止めの影響も認められる研究結果が報告され、ハワイをかわきりに、販売禁止という形から対策される流れとなっています。
販売禁止はあくまで『オキシベンゾン』『メトキシケイヒ酸エチルヘキシル』配合
今回サンゴ礁の死へ影響を与えると報告されたのは、日焼け止め成分のうちの
紫外線吸収剤と呼ばれる
『オキシベンゾン』
と
『メトキシケイヒ酸エチルヘキシル』(海外ではオクチノキサートと呼ばれる)
です。
日本でもほとんどの日焼け止めに配合されている成分です。
なので、これらの成分を利用していない日焼け止めをさがすのは、ちょっとした骨。
日本では売られているもので見つけたものを先にご紹介すると
通常の日焼け止めタイプ
リキットファンデーションタイプ
BBクリームタイプ
といった感じ。
これらには、販売禁止成分、紫外線吸収剤は配合されていません。
では、これらの商品に配合されている日焼け止め成分は何かというと、
紫外線散乱剤とよばれる
『酸化亜鉛』
と
『酸化チタン』
です。
紫外線吸収剤が、紫外線を吸収し、熱などのほかの無害なエネルギーへと変換することで紫外線のお肌への侵入を防ぐのに対し、紫外線散乱剤は紫外線そのものを反射することでお肌を紫外線から守ります。
このまったく違うメカニズムから、吸収剤と散乱剤とでサンゴへの影響もまったく違ってくることは想像に容易いですよね?
ただし、今回報告されたのは、あくまで、
『オキシベンゾン』と『メトキシケイヒ酸エチルヘキシル』
が、サンゴの白化(サンゴの病気、死の前兆)を引き起こすことが確認されたで、
『酸化亜鉛』と『酸化チタン』
が環境に優しいという研究結果ではありません。
が、人類の環境へあたえる影響はこうした一歩一歩の解明による歩み寄りが大切ですよね?
少なくとも海へ行くときは「紫外線吸収剤」は控えたいものです。
いつから販売できなくなるの?日本では?
少なくともハワイでは2021年4月1日から、販売の禁止が決定されています。
あくまで、販売禁止なので現時点では持ち込みは禁止されるものでは有りません。
とはいえ、個人的にはいずれ段階を踏んで規制されていくものと予想しています。
では、日本では?というと、現在特に規制する風潮すら出ていないように思えます。
前述のように、紫外線散乱剤のみを使用した日焼け止めを見つけるのが骨なくらいですからね。
それにあくまで、さんご礁への影響であり、山や街中ではどちらのほうがエコロジーか?
という検証ではないので、サンゴ礁豊富なハワイと同列に考えるのは早い。
日本では他に、もっと考えるべきエコロジーがたくさんある!というのが正しいのかもしれません。
また、エコロジーの外でも、紫外線の人体へ与える悪影響なども注目を集めている傾向にあり、日焼け止めの効果も見直されている側面があります。
紫外線によるタンパク質変性や、DNAダメージによる人体への影響は大きいのではないか?とされていて、若い頃からの紫外線防止が大切だとする研究もされています。
日焼け止めが日に焼けない薬品としてではなく、紫外線ダメージ予防剤として重要視され始めているのです。
エコロジーと健康。
日本でも日焼け止めは、研究進化が求められるアイテムとなっているわけです。
サンゴ礁の白化と今後
サンゴは植物ではないのに、光合成によって必要なエネルギーのほとんどを得る珍しい『動物』です。
でも実は、光合成をしているのは、サンゴそのものではありません。
サンゴの体内に住む
褐虫藻
という藻です。
褐虫藻の光合成の副産物をサンゴがエネルギーとして利用しているそうです。
ですから、サンゴは褐虫藻の存在なくして生き続けられない!と言い切れるわけですが、褐虫藻は様々な条件でいなくなってしまいます。
強い光
淡水や土の流入
水温変化(温暖化)
人間による水質変化(今回の記事で言う紫外線吸収剤)
などなどです。
かなりデリケートなようですね。
サンゴのあの艶やか色は褐虫藻によるもので、サンゴに褐虫藻がいなくなるとサンゴは色を失い、サンゴ本来の白色へ戻ってしまいます。
これがサンゴの白化です。
白化したサンゴは、褐虫藻に都合のよい環境が回復し、再び褐虫藻を取り込むことが出来れば、色とエネルギーを取り戻し復活することが出来ますが、それがかなわなければ、いずれエネルギーを使い果たし、死を迎えます。
このサンゴの白化は歯止めのきかない自然破壊として地球中で問題視されています。
その大きな要因は、地球温暖化がおさまる兆しが見られないからです。
多くの褐虫藻は温度変化に弱く、温度上昇耐性が低い傾向にあるそうで、地球温暖化がとまらなければ、必然、多くの褐虫藻がいなくなり、サンゴ礁も必然的に死滅するとよそうされているのです。
ただし、環境というのはうまく出来ているもので、温度上昇耐性に弱い褐虫藻がいなくなるということは、温度上昇耐性に強い褐虫藻が繁栄するといえなくも無いですよね?
止まらない温暖化のなかにも、こうしたサンゴ礁生存への希望はおおいにあります。
そんななか、人間はどう行動すべきなのか?
今回の日焼け止め販売禁止はとっても大切な前進です。
サンゴをはじめ、人間によって自然が受けているストレスを一つ一つ明らかにし、今回のように対策を打ち続ければ必ず解決に向かいます。
本来人間は、自然との調和をはかるのが得意な生き物と私は考えています。
今後の私たちの選択と目線は、ますます大切なものになってきます。
大人の選択が出来るよう、化粧品にかかわらずあらゆるものを正しく見通す真実ある知恵を身につけていきましょう!