シャンプーの刺激は、洗浄成分の静電気力で決まります。
低刺激なシャンプーを選びたいなら洗浄成分の種類に注目しましょう。
でも、低刺激なシャンプーってどんなシャンプーなのか?というと、、、
まずは市販でこれは、、、!と思えるシャンプーを見つけたのでご紹介します。
『クラシエ』の究極低刺激シャンプー!
唐突ですが、まずは低刺激シャンプーの具体例をあげました。
どこが低刺激なのか?というと、、、
- 低刺激が売りのいち髪シリーズの中で、まったく別次元といって良いシンプルかつ、低刺激の優良設計
- 洗浄成分が両性+アミノ酸系界面活性剤と非常に低刺激
- 低刺激シャンプーにありがちな洗浄力不足を補うノニオン界面活性剤配合
- 泡立ちを補助する両性界面活性剤も多数配合
といった具合です。
何言ってんだかちょっと分らない方、多いのではないでしょうか?
キーワードは界面活性剤ですね?
洗浄成分である界面活性剤の種類で見極める低刺激シャンプーの選び方!
シャンプーで語られるまことしやかな刺激の正体は、洗浄成分である界面活性剤の静電気力です。
静電気ときいて、ドアノブに触れてバチっと痛むあれを想像していただければ相違ないです。
髪って、下敷きでこすとボワッっとひろがりますよね?
あれは、静電気によって帯電した髪が反発しあって広がってしまうわけですが、
刺激の高いシャンプーを使うと、下敷きでこすったときと同じように髪は帯電してしまい、その状態がすごく小さいレベルのダメージを引き起こしてしまい、その積み重ねが蓄積してしまいます。
これにより、髪は痛み、お肌は炎症などのトラブルを引き起こす心配があるというわけです。
これがまことしやかに恐れられるシャンプーの刺激の正体です。
つまり、低刺激シャンプーとは、まず第一に、
静電気力をいかに低く抑えられたシャンプーか?
がお題目にあがるわけですね?
では、シャンプーの刺激、静電気力の正体とはいったい何なのか?
その秘密は、洗浄成分の洗浄のメカニズムを紐解くことでわかります。
シャンプーの洗浄力の仕組みとタンパク質への刺激の大きさ
現在シャンプーに使われる洗浄成分の主な主役は
アニオン界面活性剤
と呼ばれる成分たちです。
ラウレス硫酸Na
ココイルメチルグルタミン酸Na
、、、、
などなどたくさんの種類があります。
種類こそたくさんありますが、これらの洗浄成分のもつ、洗浄のメカニズムはすべて一緒です。
そのメカニズムは、水に触れてイオン化し静電気力を持つことで親水基をもち洗浄力を持つ界面活性剤になる!です。
難しいですが、言葉よりも実は簡単な仕組みです。
まずはお水のもつ特性について解説します。
お水の特性、電子の偏り「極性」
すべての物質は、電子、陽子、中性子からなります。
そして、物質同士が成り立つのにもっとも重要なのは陽子と電子のバランスです。
たとえば、水素(H)は陽子1つなので、電子1つ
酸素(O)は、陽子数8つなので、電子も8つ
といった具合に陽子数と電子数が合うことで安定するのです。
分子でも一緒です。
お水(H2O)ならば、Hが2つなので陽子数は2つ、Oは1つなので陽子数は8つ
全部あわせて陽子数10個なので電子も10個で安定という訳ですね。
でも電子は安定しているといっても、じっとしているわけではありません。
陽子の周りをくるくる回っています。
では、お水(H2O)にのまわりにある、10個の電子はどのような配置で動き回っているのか?
それは、酸素(O)側に偏って動き回っています。
電子を8個もひきつけるポテンシャルをもつ酸素(O)のほうに偏って電子が動き回るのは想像しやすいですよね?
結果、お水(H2O)は電気的なバランスにかたよりができ、酸素側が+水素側が-となります。
このような電気的な偏りを、『極性』と呼び、これにより極性を持つもの同士はくっつきます。
お水同士ならば有名な水素結合ですね?
これがお水の特性である「極性」です。
この力ゆえに極性のあるものを初めとする電気的な力を持つものは水に混じりやすいわけです。
だから、多くの電気的な力を持つものはお水によって洗い流せる。
その逆、『無極性』のものはというと水に混じりにくい、つまり洗浄しづらいといえるわけですね?
油のような無極性のものを洗い流すには?
私たちの体にある汚れは、古くなった皮脂などの極性を持たないいわゆる
『油』系
のものが多いです。
このような、水で洗い流せないものをどうすれば洗い流すことが出来るのか?
極性のややこしい話をしましたが、物質はより自分に近しいものにくっつく特性があります。
極性の話が最たるものですが、分子の大きさや長さ、形といったものも多くの影響をあたえます。
ですから、私たちの体に近しい「皮脂」などの汚れは、形も長さも分子の大きさも似つかない、まして極性のあるお水などでは洗い流しづらいわけですね?
ではどうすれば洗い流せるか?
一つ目は
私たちの体より皮脂に近しい、油性クレンジング剤やクレイ洗浄などであらいながす。
油は油で落とす!という訳です。
が、クレンジング剤自体も結局お水よりお肌に近しいですから、お肌に残りやすくお水では落ちきりづらいですよね?
なので、洗顔フォームなどを使う羽目になるわけです。
ではほかには方法は無いのか?
2つ目があります。
お水は油汚れと程遠すぎて逆に弾きあいます。
疎水性相互作用
というやつです。
お互いの結束の力の反作用力といったところ、これを逆に利用するのが
アニオン界面活性剤です。
アニオン界面活性剤は一つの構造に極性を電気的な力を持つ部分と持たない部分が存在する成分です。
これにより、アニオン界面活性剤は、
お水の極性と引き合いつつ、
もう一方はお水の結束、水素結合から逃げ出そうとする
といった矛盾した特長を持ちます。
これが、アニオン界面活性剤の洗浄力の源となるのです。
アニオン界面活性剤の洗浄の仕組み
アニオン界面活性剤は、お水のに反応してイオン化という現象をおこします。
イオン化とは、電気的に安定していたものが正と負の電荷を持ったもの(イオン)にわかれる現象のことです。
つまり、アニオン界面活性剤の場合、水に反応して正のイオンを放出し、負のイオンを構造の一部に持つというわけなのですが、大切なのは、電気的な力を持つことで、構造の一部がお水とくっつくようになる!ということです。
ここで、刺激とは直接関係ないですが、洗浄の仕組みについて、簡単に解説します。
ビーカーにお水を注ぎ油を入れます。
油はお水たちの結束に弾かれ1箇所に集まろうとします。
通常は水面で一箇所に丸く集まりますよね?
その中にアニオン界面活性剤を一定量以上入れてかき回します。
アニオン界面活性剤は親水基こそお水と仲良くくっつきますが、親油基は、お水同士の結束の力で追い出されていきます。
追い出された親油基はビーカーの内表面や水面に集まっていきます。
油もまったく同じです。一時的に水中に潜っていっても、結局水面へと追い返されます。
では、ビーカーの内表面や水面が、先着した油や親油基でいっぱいになってしまったらどうなるでしょうか?
もうどこへいても同じなので、油も親油基の行き場を失ったアニオン界面活性剤も水中内をさまよいます。
それでも、少しでもお水の結束から逃げ出すためにアニオン界面活性剤の親油基たちは、親油基同士を向け合い親水基を外側へ向け、まるでタンポポの綿毛の形をとって漂います。
これをミセル化といい、このミセルの中に油が混じりこめば、水と油はあたかも混じったかのようになり、安定します。
これがそのまま排水溝へと向かえば、人から見れば
洗浄された
となるわけですね?
アニオン界面活性剤のタンパク質への刺激
ながながと、洗浄のメカニズムまで解説しましたが、結局アニオン界面活性剤の刺激の正体はというと、
親水基の静電気力
です。
親水基はアニオン界面活性剤がお水と反応して出来上がるわけですが、アニオン界面活性剤の種類によって、出来上がる親水基の構造が違い、それによって静電気力も変わってきます。
では、どんなアニオン界面活性剤だと低刺激なのか?
ためしに、
刺激が高い!と言われる、ラウレス硫酸Naなどの
硫酸系と呼ばれるアニオン界面活性剤
低刺激でオススメ!と評判の良いココイルメチルグルタミン酸Naなどの
アミノ酸系と呼ばれるアニオン界面活性剤
両者を簡単に比較して解説してみましょう。
硫酸系界面活性剤の親水基の構造
硫酸系の界面活性剤の親水基となる部分は化学記号で
R-O-SO3Na
の太字部分。お水と反応し
R-O-SO3マイナス
と
Na+
へとイオン化します。注目は
SO3マイナス
ですね?
ここで思い出していただきたいのが、H2Oの極性です。
いかなる分子も分子内で電子の引っ張り合いをしています。
ではSO3内ではどうか?というと、
硫黄(S)の引っ張る力が2.58
酸素(O)の引っ張る力が3.44
超簡略化すると下図のよう
アミノ酸系界面活性剤の構造
硫酸系の界面活性剤の親水基となる部分は化学記号で
R-COONa
お水と反応しイオン化することで
COOマイナス
が親水基となります。
電気の引っ張り合いは?というと
炭素(C)の引っ張り力は2.55
酸素(O)は前述のように3.44
同じく超簡略化すると
といった感じ。
改めて両者を比較!
実際はもっと難しい計算が必要ですが、簡易的に比べてみましょう。
まずは、両者のまったく違う部分、硫黄(S)と炭素(C)について改めて比べてみると
硫黄の引っ張り力2.58
炭素の引っ張り力2.55
とほぼ互角。
では、両者とも持ち合わせている酸素(O)についてどうかというと
付いてる場所もさることながら、まず
「数」
が違いますよね?
当然、1個多い分、電子を引っ張る力は硫酸系のほうが1段上になるわけです。
アニオン界面活性剤は、イオン化して-の力を得る成分。
電子が親水基によるということは、そのまま、アニオン界面活性剤の親水基の静電気力も増すといえます。
本当は、もっと複雑な計算が必要ですが、かなり簡略化したこの違いだけでも、静電気力に差が現れることは明らかで、アミノ酸系のほうが硫酸系より静電気力が低い、すなわち、刺激になりづらい!といえますよね。
低刺激のアニオン界面活性剤はどれ?
アニオン界面活性剤の種類は、凄まじい量あります。
ほぼ同じ成分でも違う名前で呼んだりすることも手伝って我々一般消費者がそのすべてを見極めるのは不可能といって良いでしょう。
じゃあ打つ手は無いのか?というと簡易的にある程度見極めるテクニックがあります。
ようは、静電気力を比べられれば良い!
つまり、親水基がどのような構造をもっているか?
がざっくりと分ってしまえばよいのです。
親水基を構造別で系統をあらわすのが、巷で良く言う。
アミノ酸系、硫酸系、といったわけ方です。
たとえば、アミノ酸系とは、親水基に、アミノ酸の構造、カルボシキル基とアミノ基を持ったものの総称で、同じアミノ酸系ならば、ちょっとした違いはあろうとも、お水により親水基を得たときに、先ほど解説したアミノ酸系の界面活性剤の構造を持ち、その静電気力にそう違いは出無いであろうといえる。
だから、親水基の構造別で一括りにして、刺激や洗浄力を基準で決め付け、比べることでシャンプーの洗浄力と刺激を比較しようという訳ですね。
これを利用すれば、アニオン界面活性剤はざっくりその刺激性を分けることが出来ます。
その方法はシャンプーの全成分表示の前半に記載されているアニオン界面活性剤の名前の特徴です。
市販のアミノ酸系優良シャンプーで言うと、写真の下線部
ラウロイルサルコシンサンTEA
が主要なアニオン界面活性剤であり、サルコシンサンが親水基にあたり、この構造がアミノ基とカルボシキル基で出来ているからアミノ酸系シャンプーで低刺激な傾向にあるというわけですが、下の表を利用すればもっと簡単に判別できます。
ラウロイルサルコシンサンTEAは下の表でいう
ラウロイル~
にあたるから、アミノ酸系(PPT系)にあたり洗浄力肌刺激性ともに低い傾向にある!といったかんじです。
グループ名 | 名前の特徴 | 肌刺激性 | 洗浄力 | |
石鹸系 | ~石けん~ | かなり高い | かなり高い | |
硫酸系 | ラウリル硫酸〜 ラウレル硫酸〜 〜スルホン酸 | 高い | 高い | |
アミノ酸系(PPT系) | ラウロイル〜 ココイル〜 ココアンホ〜 | 低い | 低い | |
スルホコハク酸系 | スルホコハク酸〜 | 低い | 普通 | |
お酢系 | 〜酢酸アミノ酸 〜酢酸Na | 低い | 普通 | |
タウリン系 | 〜タウリン ~プロピオン酸Na | かなり低い | かなり低い |
これで市販のシャンプーのほとんどが仕分けられるはずです。
一部問題は石けん系ですね。
ほとんどの場合、石けんは一般家庭に定着した安心感がメリットとしてつくられているので、素直に
石けんシャンプー
と記載があります。
でも、本当は高刺激なんですよね。
なぜなら、アルカリ性だからです。
静電気力がどうこう言う以前、別次元の切り口からのダメージを与えてしまうデメリットの大きい洗浄成分というのが実情です。
ですから、低刺激を求める場合、低刺激シャンプーを始めとした洗浄アイテムを選ぶとき、洗浄成分としてはなるべく避けたい成分なのですが、困ったことに、、、
石けん系洗浄剤の商品表示には、素直に
カリ石けん素地
と何故か記載しないケースがわりと有ります。具体例を挙げるのなら、一番多いと思われるケースが
ヤシ油、水酸化Naと分けてかかれる場合です
この場合、全成分表示には
石けん
らしき記載はいっさいありません。
ヤシ油と水酸化Naを混ぜて出来るのは、カリ石鹸素地なのですが、わざわざ分けて掲載するケースがあるんです。
おそらく、ほかの石けん洗浄剤、たとえば、馬油、水酸化Naなんかと差別化(結局まったく同じカリ石鹸素地)したくて、植物由来アピールなんかのつもりでしょうが、良い迷惑w
石けんを避けたい場合は、気をつけましょう。
水酸化Naなどの劇薬がわざわざ記載されているとき、アニオン界面活性剤の表示が見当たらない洗浄剤などには要注意です。